産業財産権Q&A

Q14

小売等役務商標の出願の受付が開始されたと聞きましたが、その内容を教えてください。

A

 小売等役務商標だけを説明しても解り難いので、まず商標登録制度について概説する。

 (1)商標は、「ABCストア」等の文字だけでなく、キャラクター等の図形なども含まれる。商標について独占使用を希望する商品(役務)を指定して特許庁 に商標登録出願する。独占使用を希望する商品(役務)のことを指定商品(役務)といい、商品または役務の区分に従って出願書類に記載することになってい る。言い換えれば商標登録出願は漠然と商標(マーク)の登録を求めるものではなく、使用を欲する商品(役務)を指定して、その範囲において登録を求める仕 組みになっている。
 商品または役務の区分は1類から45類まであり、1類から34類までが商品の区分で、35類から45類までが役務の区分である。商品の区分は「菓子及びパ ン」(30類)のように商品(品物)を対象としている。また役務の区分は「車両による輸送」(39類)のように役務(行為)を対象としている。なお、商品 または役務の区分は特許庁のホームページに掲載されている。

(2)今回の改正では、役務の区分の一つである35類に「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等が加わった。
 これによって、小売業者、卸売業者(以下、小売業者等という。)が顧客に対して行うサービスに使用する商標の登録が可能になった。
小売業者等には、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、八百屋、魚屋、肉屋、眼鏡店等、あらゆる小売業者等が含まれる。また、カタログ、インターネット等を利用した通信販売も含まれる。
 「顧客に対する便益の提供」とは、例えばデパートの店舗における品揃え、商品説明、陳列が挙げられる。通信販売会社では顧客が商品を選びやすいように、商 品のレイアウトを工夫したカタログの提供、インターネットを利用した通信販売では、顧客が商品を選びやすいようなサイトの提供が挙げられる。

(3)商標は、小売業者等が店舗の看板、店員の制服、レジ袋、包装紙、商品の値札、価格表、レシート、買い物かご等に表示するもの、更に店舗内の売場の名称等が該当する。

(4) 多くの小売等役務商標の出願が4月1日に集中する混乱を避けるため、平成19年4月1日から6月30日までの間に出願された小売等役務商標の出願は、同日 に出願されたものとして取り扱われる。但し、同日に出願されたものとして取り扱われるのは小売等役務を指定した範囲どうしだけであり、自己の出願の小売等 役務を指定した範囲と、他人の出願の商品を指定した範囲との間では、先願主義(早く出願した者勝ち)が適用される。
 小売等役務商標の出願は必ず登録されるものではなく、他の商標登録出願と同様に特許庁における審査にパスすることが登録の条件となる。

(5) 商標登録が認められた場合は、登録商標を登録された商品(役務)の範囲で自由に使用でき、またその類似範囲で他人の使用を排除することができる。即ち、商標権は独占排他権として機能することになる。