産業財産権Q&A
経営セミナーで商標登録は商売に必要なものであると聞いたのですが、その意味が明確に解りません。どういうことなのでしょうか。
(1)皆さんが買い物に行ったとき、商標を基準に商品を選んではいないだろうか。例えば、女性に人気の高級ブランドには、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」「コーチ(COACH)」などがあり、これらの商標を目印にバッグを買うのは当然のことである。
また、スーパーマーケットに食パンを買いに行ったときにも、「Pasco(パスコ)」「ヤマザキ」「フジパン」などの商標を目印にしていないだろうか。
更に、コンビニでも「セブンイレブン」「ローソン」「ファミリーマート」などの商標を目印にして区別している人が多いと思う。
普通名称の「バッグ」「食パン」「コンビニ」では顧客に識別してもらえない。言い換えれば、「この商品は良い。また買いたい。」と思ってくれた顧客が次に商品を探すときの目印がない状態になってしまう。
そこで、企業はブランドとなる商標をつくり、それを登録して顧客に対する目印を確保すると共に、偽物が出てきても法的手段をとることができるようにしている。
(2)どのような商売でも企業規模に拘わらず競合他社がいて、互いに自社商品を売るために競い合っているわけで、「この商品は良い。また買いたい。」と思ってくれた顧客に対して目印を確保することは極めて重要なことである。
例えば、地方のパン屋の主人が特製の食パンを考案して売出し、それが非常に美味しくても、普通名称の「食パン」では顧客は他社の「食パン」と区別が付かない。普通名称は言わば「名無しの権兵衛」で商売をするようなものなのである。そこで、上述の「Pasco(パスコ)」等で説明した商標が必要になる。企業の大小に拘わらず理屈は同じなのだ。
(3)上述の説明を前提として、国の機関である特許庁が管轄する商標登録がなぜ必要なのかを説明する。
「この商品は良い。また買いたい。」と思ってくれた顧客が「Pasco(パスコ)」を目印に食パンを買ったところ、これが偽物で以前買った食パンと異なり味が悪かった。これでは顧客が損害を被ることになるし、また「Pasco(パスコ)」は味が悪いと思われたのでは本物の「Pasco(パスコ)」の業務上の信用が害されてしまうことになる。
そこで、特許庁が審査を行い、これにパスしたものについて商標登録を認めて、本物の「Pasco(パスコ)」の会社(商標権者)だけが「Pasco(パスコ)」を使用できるようにしているのだ。
だから、良い商品を販売して顧客にまた買ってもらう商売をしようとする人は商標登録が必要である、ということになる。
知って得する 特許・商標の知識 vol.34 (平成29年9月)