産業財産権Q&A

Q66

特許出願に係る発明の製品の販売を始めたところ同業社から模倣品が販売され始めました。特許出願をしてから6ヶ月程で出願公開されていませんが法的な手段を講じる余地はあるでしょうか。

A

 早期公開を請求して警告書を出す。

早期公開を請求して出願公開されてから、模倣品を販売している者に対し補償金請求権を行使する旨の警告書を出すことを検討すべきである。

 特許出願は原則として出願日から1年6ヶ月を経過すると出願内容が公開され、インターネット上においてだれもが見ることができる状態となる。従って、この公開された特許出願の技術情報をもとに模倣品を造ることができてしまう場合もある。一方、出願審査請求を行ってから審査結果がでるまで1年以上かかることも珍しくない。このため、出願公開された特許出願の内容を知って、模倣品を製造、販売した者に対し、特許権者に補償金の請求を一定の条件の下、認めることで発明の保護を図っている。

 補償金請求権は、出願公開されてから特許権設定登録前(特許権の発生前)の期間において、特許出願に係る発明を保護しようとするものである。すなわち補償金請求権は、その発明が特許された場合に実施料相当額の支払いを請求できることを内容としている。この権利を行使することができるのは特許権の設定登録後である。特許出願が審査にパスせずに、特許が認められなかった場合は補償金を請求することはできない。

 この補償金請求権が認められる条件として、まず出願公開されていることが必要である。上記のように出願公開は原則として出願日から1年6ヶ月を経過してからなので、質問にあるように特許出願をしてから6ヶ月程であれば、出願公開されておらず補償金請求権が認められる条件を満たしていない。そこで、出願人の請求があれば、特許出願日から1年6ヶ月前でも出願公開を行う早期公開制度が設けられている。この早期公開の請求があれば、請求から2ヶ月~3ヶ月で出願公開がされることになる。

 更に、補償金請求権が認められる条件として、模倣品を販売等している者に対し、特許出願に係る内容を記載した書面を提示して警告することが必要である。この警告書は後の証明のため内容証明郵便に付して送ることが望ましい。なお、警告書を出さない場合でも、模倣品を販売等している者が出願公開された特許出願に係る発明であることを知っている場合は補償金請求権が認められることになる。

 このように補償金請求権が認められるためには、出願公開されており、しかも模倣品を販売等する者に原則的に警告書を出すことが必要となる。そこで、質問にあるように特許出願してから6ヶ月程である場合は早期公開を請求して、出願公開されてから警告書を出すことを検討すべきである。また、補償金請求権を行使することができるのは特許権の設定登録後であることから、出願審査請求を行うべきである。

 更に、通常の審査期間より短い期間で審査を行うことを求める早期審査の申請を行うことも検討すべきである。早期審査の申請を行うために、早期審査に関する事情説明書を提出することが必要となる。早期審査の事情説明書には、特許出願に係る発明をすでに実施している、すなわちその発明に係る製品をすでに製造等していることを記載する。質問では特許出願に係る発明の製品を製造、販売していることから、早期審査の申請を検討すべきである。

 なお、模倣品が製品の形態を模倣したデッドコピー品である場合は、不正競争防止法違反となる可能性もあるので、この点についても検討すべきであると判断される。

 

知って得する 特許・商標の知識 vol.38 (令和元年9月)