産業財産権Q&A

Q65

元号が平成から令和に変わりましたが、元号を商標登録することはできるのでしょうか。

A

 商標審査基準には、旧元号、現元号を問わず、元号として認識されるに過ぎない商標は商標法第3条第1項第6号に該当し商標登録が認められない旨が記載されている。

 商標法第3条第1項第6号は「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は商標登録を受けることができない旨を規定している。すなわち、出願された商標について、自分の商品(役務)と他人の商品(役務)とを識別することができるか否かの審査を行い、自他商品識別標識として機能しないものである場合は登録を認めないとしている。元号として認識されるに過ぎない商標を出願しても原則として商標法第3条第1項第6号に該当するため拒絶されることになる。

 ただし、歴史上の元号の全てが拒絶されるわけではない。日付を示すものとして一般的に使用される元号は、およそ「明治」までであると考えられる。従って、「大化」「元禄」のような歴史上の元号は商標法第3条第1項第6号には該当しないと判断される。

 なお、「前各号に掲げるもの」には、例えば「普通名称」があり、具体例で言えば「ポテトチップス」である。顧客が以前購入して気に入ったポテトチップスを探すときに目印となるのが自他商品識別力のある商標で、例えば「Calbee」であり、「湖池屋」なのだ。言い換えれば、普通名称である「ポテトチップス」だけでは、いくら良い商品を売っても「名無しの権平」で商売をするようなものなので、顧客に覚えてもらうことはできない。だから、企業は自他商品識別力のある商標を自社だけが独占して使用できるように、商標権を取得するのだ。この裏返しとして自他商品識別力がない商標は登録を認める意義がないので拒絶されることになる。このように商標法第3条は商標の本質が自他商品識別標識であることを示すものといえる。

 

 参考文献 

日本弁理士会発行 パテント 2019.4 「昨今の商標制度の改定・検討事項の紹介と商標委員会の関わり方について」

特許庁 商標審査基準  第3条第1項第6号

 

(2019年5月7日)