産業財産権Q&A
2020年東京オリンピックに関する報道の中で著作権、商標権について取り上げていたことを覚えていますが、2025年の大阪万国博覧会(以下、大阪万博という。)についてはそのような問題はないのでしょうか。
大阪万博についても東京オリンピックと同様に著作権、商標権等の知的財産権が問題になる可能性がある。大阪市のサイトをみると「2025日本万国博覧会誘致ロゴマークが決定しました」というタイトルのページがあり、図形とOSAKA-KANSAI/JAPAN EXPO2025の文字からなる誘致ロゴマークが掲載され、更に選定方法の項目には、「応募作品の中から一次審査、商標権・著作権調査、一般投票を経て、選定委員会により決定」と記載されている。そして、この誘致ロゴマークは、大阪府知事 松井一郎氏を商標権者として商標登録(第6027568号、第6027581号)されている。
商標登録第6027568号の登録商標は、図形のみから成り、商標登録第6027581号の登録商標は、図形とOSAKA-KANSAI/JAPAN EXPO2025の文字から成る。いずれの商標も、第16類「文房具類、印刷物等」、第25類「被服等」、第26類「衣服用バッジ等」、第35類「事業と商業又は広告のための展示会・商品見本市・博覧会の企画・運営又は開催に関する情報の提供等」、第41類「科学・経済・文化・教育・娯楽のための博覧会・展示会・セミナー又はシンポジウムの企画・運営又は開催等」を指定して登録されている。このように誘致ロゴマークを商標登録することで、正当な権限のない者が誘致ロゴマークを勝手に使用するのを法的に規制することができる。
商標登録は第〇〇類「○○」のように、商品及び役務の区分に従って商品又は役務が指定されている。すなわち、商標登録は文字、図形等(商標)を漠然と登録するものではなく、権利範囲となる商品又は役務を指定して為される仕組みになっている。例えば、Tシャツについて商標を独占して使用する権利を得たい場合には、上記の第25類「被服」を指定する必要がある。
因みに、商品及び役務の区分は第1類から第45類まであり、第1類から第34類までが商品についての区分、例えば上記の第25類「被服等」であり、第35類から第45類が役務についての区分、例えば上記の第41類「科学・経済・文化・教育・娯楽のための博覧会・展示会・セミナー又はシンポジウムの企画・運営又は開催等」である。第35類から第45類までの範囲の商標をサービスマークという。
商品又は役務の指定の範囲を誤ると、希望する権利範囲の商標権を取得することができなくなってしまうので、専門家に相談すべきである。
なお、1970年に大阪で開催された万博の図形とEXPO’70の文字からなる商標は第16類「地図等」、第25類「被服」を指定して登録されている。商標権者は大阪府である。
知って得する 特許・商標の知識 vol.37 (平成31年2月)