産業財産権Q&A

Q42

他人が「富士山」を商標登録している場合、「富士山」がつく商標は全てその指定商品について使用することが禁止されるのでしょうか?

A

 いいえ、そんなことはない。「富士山」と非類似の商標であれば、指定商品と同じ商品について使用しても商標権の侵害にはならない。
 登録商標と同一または類似商標を指定商品に使用すると商標権侵害となる。類似商標とは、称呼、観念および外観のうち少なくとも一つが似た関係となる商標をいう。
称呼類似とは呼び名が似ていることをいい、例えば「ソニー」と「ソミー」は称呼類似となる。観念類似とは意味が似ていることをいい、例えば「王様」と「キング」は観念類似となる。外観類似とは見た目が似ていることをいい、主として図形商標が似ているか、似ていないかを判断する場合に問題となる。
 「富士山」は、「MT.FUJI(マウント フジ)」など観念類似についても問題となる場合もあるが、称呼類似が問題となることが多いと思われる。そこで、富士山を含んでいても「富士山」と非類似となる商標について調べてみた。
 「ビール」や「洋酒等」について「富士山」が商標登録されているが、同じ指定商品について「富士山の地」、「富士山赤富士」、「富士山ごうりき」、「富士山徐福」、「富士山自然」、「富士山ご来光ビール」、「富士山の金山」、「富士山埋蔵金」などが登録されている。これらの商標と「富士山」は特許庁の審査で非類似とされたので、商標登録が認められたのである。このように、「富士山」に言葉を加えて、縁起の良い名称をつくり、これを商標登録するのも一つの手ではないかと思う。
 なお、商標が同一、類似でも商品が非類似であれば商標権侵害にはならない。商品が類似するかどうかは販売場所などを勘案して判断されるが、例えば、菓子の「ケーキ」と「クッキー」は類似であると判断され、「ケーキ」と「鉛筆」は非類似であると判断される。

 

商標 非類似