産業財産権Q&A
ライバル企業のカタログを見ていたところ、「PAT」「PAT.P」と記載されています。これらはどういう意味なのでしょうか。
「PAT」はPatent、すなわち特許を取得しており、特許権を侵害している者に対し法的手段をとることができる状態であることを意味する。「PAT.P」はPatent pending、すなわち特許出願中であり、まだ権利化されておらず、すぐに法的手段をとることができる状態ではないことを意味する。
(出願)
出願とは特許庁に申請書類を提出することを言う。これで「PAT.P」ということになる。
(出願公開)
出願から1年6ヶ月を経過すると、原則として出願された内容が公開される。
(審査請求)
特許出願は申請書類を提出しただけでは審査されない。出願とは別に審査請求を行って、はじめて審査が行われる。審査請求は出願後、3年以内であればいつでも行うことができる。この3年間を審査請求期間といい、審査請求期間内に審査請求を行わないと、その出願は取り下げられたものとみなされる。従って、「PAT.P」ではなくなる。
3年以内に審査請求を行う率、すなわち審査請求率は50%強で、言い換えれば50%弱の出願が審査を受けない。折角出願したのに審査を受けないのは勿体ないと思われる方もいるかもしれないが、例えば出願後3年を経過するまでに、出願対象の技術が旧式なものとなって、もはや特許取得が必要なくなることもある。また、同業他社に対するけん制だけを目的とする、すなわち「PAT.P」を表示可能にするための特許出願もあると思われる。
(特許査定)
審査請求を受けて、審査官が出願の内容を審査し、審査にパスすると特許査定が送られてくる。そして、出願人が特許料を納付すれば特許が付与されて、「PAT.P」から「PAT」になる。
(特許異議申立)
特許公報を見て異議がある人は特許異議申し立てをすることが可能である。
(権利満了)
特許は特許料を納付し続ければ出願日から20年間存続するが、途中で特許料の納付を止めることもできる。例えば、特許料を10年分納付したところで止めて、特許を消滅させることも可能である。不要になった特許についてまで特許料を払い続けるのは無駄なので、保有している特許が本当に必要なものであるか否かを見直すことが必要だ。
(拒絶理由通知)
審査の結果、特許を付与できないということになると拒絶理由通知が送られてくる。
(意見書・補正書)
拒絶理由通知を受け取った出願人は審査官の考えに反論する意見書や出願内容を当初の範囲でやりくりする補正書を提出して反論することが可能である。意見書や補正書を読んで、審査官が考えを変えれば前記した特許査定が送られてくる。
(拒絶査定)
意見書等を提出しても審査官の考えが変わらない場合には拒絶査定が送られてくる。この拒絶査定に不服である場合は審判の請求を行うことができる。審判で争っている間は「PAT.P」ということになる。審判で争わない場合には拒絶査定が確定し、このようになると「PAT.P」ではなくなる。
ライバル企業の出願が「PAT.P」であるのか「PAT」であるかを正確に把握するためには専門家に相談すべきであり、素人判断は禁物である。